「ホームページとチラシで、なんか雰囲気が違う気がする」——そんなことを感じたことはありませんか?
ロゴは同じ、社名も同じ、なのに並べてみると別の会社みたい。お客さんに「あのチラシの会社ですよね?」と確認されて、ちょっと困ったことがある——これは決して珍しい話ではありません。
原因は「センスの問題」ではなく、紙とWebでデザインを作るときに「整理すべき情報が共有されていなかった」というケースがほとんどです。制作会社が違う、担当者が違う、時期が違う。それだけでブランドのビジュアルはじわじわとズレていきます。
この記事では、紙とWebで「同じブランドに見えない」現象が起きる根本的な原因と、制作前に整理しておくべき具体的なポイントを解説します。
結論として、「何かを作る前に言語化・ルール化しておく」ことが、ブランドの一貫性を保つ最もシンプルで確実な方法です。
「同じブランドに見えない」は、なぜ起きるのか
紙とWebのデザインがバラバラに見えてしまう理由は、大きく3つに整理できます。
① 媒体ごとに別の制作会社・担当者が動いているから
チラシは地元の印刷会社に頼んでいて、ホームページは別のWeb制作会社に依頼している——こうした状況は、多くの中小企業で日常的に起きています。それぞれの制作会社は誠実に仕事をしていても、「共通のビジュアルルール」が存在しなければ、結果としてバラバラなアウトプットが出てくるのは避けられません。たとえばAの会社がロゴの余白を詰めて使い、Bの会社が書体を少し変えて使ったとしたら、それだけで印象はズレ始めます。
② 「なんとなく」でデザインを発注しているから
「うちのイメージでお願いします」という依頼は、制作者にとってはかなり手探りな状態です。明確な基準がない中で作られたデザインは、制作者のセンスや解釈に依存します。その結果、チラシはPOP寄りに、Webはシンプルめに仕上がる、といった「担当者ごとの解釈の違い」が積み重なっていきます。これは発注者が悪いわけでも、制作者が悪いわけでもなく、「共通言語がなかった」ことが原因です。
③ 紙とWebの「技術的な制約の違い」を理解していないから
印刷物はCMYKという色の表現方式を使い、画面はRGBを使います。同じ色コードを指定しても、紙に印刷すると微妙に違う色に見えることがあります。また、印刷では使えるフォントと、Webで安全に表示できるフォントが異なるため、「同じフォントにして」と伝えても実現できないケースも出てきます。こうした技術的な違いを把握しないまま進めると、意図せずビジュアルがズレてしまいます。
紙とWebで特にズレやすい「4つの要素」
デザインの構成要素はたくさんありますが、媒体をまたいだときにズレが生じやすいのは、主に次の4つです。
1. カラー(色)
ブランドカラーが「青っぽいやつ」という程度にしか決まっていないと、印刷では明るい水色に、Webでは濃紺に、という状態が生まれます。カラーはRGB値(Webや画面用)とCMYK値(印刷用)の両方を事前に決めておくことが理想です。また、メインカラー・サブカラー・アクセントカラーの役割分担も整理しておくと、どの媒体でも同じトーンを再現しやすくなります。
2. フォント(書体)
紙媒体では有料の商用フォントを使えても、Webでは同じフォントを使うとライセンスの問題が生じたり、読み込み速度に影響したりすることがあります。逆に、Webで使いやすいゴシック系の書体が、印刷物では軽すぎて見えることも。「紙とWebで完全に同じフォントにする」より「同じ雰囲気を持つフォントを媒体に合わせて選ぶ」という考え方が現実的です。
3. 写真・画像のトーン
明るくポップな写真と、落ち着いたトーンで統一された写真では、ブランドイメージがまったく変わります。写真の明るさ・彩度・構図のテイストが媒体ごとにバラバラだと、読者は「なんとなく違和感がある」と感じます。たとえば「人物は笑顔・自然光・白背景」などの方針をひとつ決めておくだけで、統一感は大きく変わります。
4. コピーやメッセージのトーン
チラシでは「お気軽にどうぞ!」と書いているのに、Webでは「ご用命の際は〜」という硬い表現になっている——言葉のトーンがバラバラだと、読んだ人は会社全体のスタンスが見えにくくなります。デザインだけでなく、言葉のトーンも媒体をまたいで一貫させることが大切です。
制作前に整理しておくべき5つのこと
「ブランドガイドライン」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。大企業では何十ページにもわたる文書として存在しますが、中小企業や個人事業主では、そこまで大げさなものでなくていいです。「A4で1〜2枚にまとめた社内共有用のルールシート」だけでも、デザインの一貫性はぐっと上がります。次の5つを制作前に整理しておきましょう。
ブランドカラーの定義(RGB・CMYK・16進数)
「なんとなく青」ではなく、数値で決めておく。メインカラーとサブカラーを最低限定義しておくと、複数の制作会社に発注するときも統一しやすい。
使用フォントの指定(媒体別)
Webで使うフォント・印刷物で使うフォントを分けて指定しておく。フォントが変わるときは「同じ雰囲気」を伝えられるよう、参考サンプルも添えると伝わりやすい。
ロゴの使用ルール(最小サイズ・余白・使用不可パターン)
ロゴはブランドの顔。縮小しすぎない、背景色によって白黒を使い分けるなど、最低限のルールを明文化しておく。
写真・ビジュアルのトーン指定(参考例を添える)
「こういう雰囲気の写真を使う」というサンプルを3〜5枚用意しておくと、言葉だけの説明より格段に伝わる。Pinterest等でイメージボードを作るのもおすすめ。
コピー・言葉のトーン(ターゲット・口調の方向性)
「誰に・どんな言葉で・どんな気持ちで伝えるか」をひとことで言えるようにしておく。たとえば「30代の働く女性に、親しみやすく丁寧に」という一文があるだけで、ライターやデザイナーの解釈がぶれにくくなる。
紙とWebを「同じ会社が担当すること」の強み
上で挙げた整理を自社でやるのは、最初はなかなか大変です。特に「どんな写真のトーンが自社に合うのか」「色をどう使い分けるか」というビジュアルの方向性は、専門知識がないと判断しにくい部分でもあります。
そこで有効な方法のひとつが、紙とWebを同じ制作会社に依頼することです。別々の会社に頼む場合と比べて、次のようなメリットがあります。
| 項目 | 別々の会社に依頼 | 同じ会社に依頼 |
|---|---|---|
| ブランドカラーの一致 | 都度指定が必要 | 共通で管理できる |
| フォントの統一 | 制作会社ごとに解釈が異なる | 一貫したルールで制作 |
| 写真・画像のトーン | 媒体ごとにバラつきやすい | 同じ撮影・補正方針で統一 |
| コピーのトーン | 担当者により異なる | 同じヒアリングをベースに作成 |
| 修正・変更の反映 | 複数社への連絡が必要 | 一箇所への連絡で完結 |
もちろん、紙とWebを得意とする制作会社は多くないのが現実です。「Webは得意だけど印刷物は外注で…」というケースも珍しくありません。依頼先を選ぶときは、両方の実績があるかどうかを確認するのがポイントです。
まとめ:「ブランドの一貫性」は制作前の準備で決まる
紙とWebで「同じブランドに見えない」問題の多くは、センスの問題でも予算の問題でもなく、「事前の言語化・ルール化ができていなかった」ことが原因です。
整理しておくべき5つのポイントを振り返ると、次のとおりです。
- ブランドカラーをRGB・CMYKで数値化する
- 使用フォントを媒体別に決めておく
- ロゴの使用ルールを最低限明文化する
- 写真・ビジュアルのトーンをサンプルで共有する
- コピー・言葉のトーンをひとことで言えるようにする
これらをまとめた「簡易ブランドルールシート」を1枚作っておくだけで、複数の制作物にわたってブランドのビジュアルはぐっとまとまります。
グラフィティーでは、ロゴ・チラシ・パンフレットなどの紙媒体制作と、Webサイト・LPのデザイン・制作を一貫して手がけています。「紙とWebで世界観がバラバラになってしまっている」「そもそも自社のブランドイメージが整理できていない」というご相談から、一緒に整理していくことも可能です。まずはお気軽にご相談ください。